今の世の中、派遣社員の処遇問題等が、色々議論されている。そこで、今一歩突っ込んだ議論をしてみたい。それは、
「企業がなぜ非正規雇用者を使うようになったか?」
と言う議論である。これに対して、コストカットや負荷変動対策と言うのは、一面的な見方である。ここで議論したいのは、
「正規雇用のメリットがなぜ見出せなくなったか?」
と言う議論である。つまり、1980年代にアメリカが
「日本に学べ」
と言っていた時代には、
「日本の経営は終身雇用による社員の継続教育とKnow How蓄積による」
と言う議論が盛んに行われていた。この議論がどういう形で覆されたのであろうか?
私の仮説は、マニュアル化の推進の結果である。ここで、マニュアルの効果を考えてみる。まず、ラスムッセンの人間行動の3分類を仕事に当てはめてみよう。
1.スキルベースの行動:メーターの表示値を目的に合わせるため、
操作器を調整する。
2.ルールベースの行動:ルールによる行動、マニュアルに従う行動。
3.知識ベースの行動:動作原理まで遡って検討し、判断して行動する。
ここで、1.のスキルベースの行動の例は、現場の職人技や、高度の接客作業である。このような技は、長年の訓練で身につくものである。これは、一般職といわれる分野である。また、3.の知識ベースの行動の例は、開発設計技術者や、マーケティング戦略の検討などである。これも、長年の蓄積で身につくものが大きい。これは、総合職である。
さて、ここで問題になるのは、ルールベースの行動である。これはマニュアルどおりの行動と言うことで、ある程度の訓練が終われば、それ以上の能力向上はあまり期待できない。従って、正規社員の継続雇用のメリットがなく、派遣社員やパートタイマーなどの非正規雇用に、依存することが多くなる。
もう一度、小売店を例にして考えてみよう。まず、出店戦略や、市場動向を見ての品揃えなどを決めるのは、知識ベースの行動と言える。そして、接客している場合に、お客様の表情を読み、適切な品を薦めるのは、スキルベースの行動である。この二つは、長年の蓄積が重要である。しかしマニュアルどおりの仕入れ、接客なら、できるだけ低い賃金で働く労働者の投入と言う発想になる。
そこで、今就職活動を考えている、大学3年や修士課程1年の皆さんに、もう一度考えた欲しい。自分は、本当の総合職に値する知的生産活動ができるであろうか。現状は、初歩的でも、継続し成長することを、採用側に感じさせることができるだろうか?
なお、マニュアル化に関して、一言加えると、教科書メーカーが作ってくれた、指導要領書がないと、授業できない教師は、ルールベースの行動ではないかな?そうすると、経験での積み重ね効果がなく、積継続雇用の値打ちがなくなってくるのではないかと思う。
最近のコメント