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2014年10月31日 (金)

大学の学問が役立つ話

 先般、Inoue氏が紹介してくれたG型大学、L型大学の議論 に関して、日経BPのHPに面白いコメントが載っていた。
 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20141030/273213/
 どちらかと言うと産業界寄りになる、日経BPがこのコメントを載せることが、意味深である。
 さて、この著者の主旨とは違うだろうが、このページの最後に気になる一節があった。

 最後に、これは、森田真生さんという独立数学者がその「数学ブックトーク」というイベントの中で紹介していたお話の受け売りなのだが、安倍首相のためにあえて引用することにする。

 いまは、誰もが知り、誰もが使い、すべての産業の基礎を作り替えつつあるデジタルコンピュータは、20世紀の半ばより少し前の時代に、ごく限られた人間の頭の中で、純粋に理論的な存在として構想された、あくまでも理論的なマシンだった。

 「もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育」というところから最も遠く、実用と換金性において最弱の学問と見なされていた数理論理学(の研究者であったチューリングやノイマンの業績)の研究が、20世紀から21世紀の世界の前提をひっくり返す発明を産んだのである。

 なんと、素敵な話ではないか。
 目先の実用性や、四半期単位の収益性や見返りを追いかける仕事は、株価に右往左往する経営者がやれば良いことだ。

この話、実は情報工学をかじった人間なら、多くの人が知っている、裏の話がある。まず、チューリングは、第2次大戦中にイギリスの情報機関に協力し、当時最強のドイツ軍暗号を解読した。これは、機密中の機密であったため、功労者としての特別扱いもできずに、個人的な問題によりチューリングの自殺に至った。

 一方、フォンノイマンの方は、確かに数学基礎論の分野で最先端研究をしていたが、ゲーデルの不完全性定理の話を聞き、あっさり退却して、アメリカでは原子力爆弾の開発に貢献した。長崎型原爆のプルトニウムの爆縮に関しては、フォンノイマンの計算がなければ、実現できなかった言われている。さらにゲーム理論など色々の貢献をし、フォンノイマンの臨終の場には、合衆国大統領が、最後の指示を受けに来たという伝説もある。

 このように、チューリングにしろノイマンにしろ、夢を追っただけでなく、現実にも確たる貢献をしているのである。学界の議論の場の内弁慶ではなかった。

 但し、この話にはさらに、裏話がある。実は日本の数学者も、第2次大戦中は、暗号解読などでは、大きな貢献をしている。海軍の運用がお粗末だったので、日本の暗号技術は、第2次大戦中はひどいモノだった言う迷信もあるが、あるレベルのアメリカ軍暗号を解読していたのは事実である。但し、終戦時に、戦争協力と言う話を消すために、そこに参加した数学者の名前などは焼却されてしまった。

 日本の学問界にある、実務との壁には、このような戦後の古傷があるような気もする。しかしもう関係者の多くは現役や、此の世を去っているので、もう一度実務との関連を考えてもよいのではと思う。

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