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2014年10月22日 (水)

学界の議論と実務の議論

 Inoue氏から頂いた話で、制御の技術者の話があった。
 http://www.jfps.jp/ryokuin1208/pdf/R.pdf
つまり、制御工学の研究者と、機械工学の研究者は、直観的に解りやすい図を描く、と言う話である。確かに、機械工学の中で制御の話と言えば、ワットの蒸気機関のガバナ制御に始まる、具体的なものと対応した切り口から入ることが多い。一方、制御工学の教科書と言えば、安定性の話などと言うことで、直ぐに数式が並び出す。
 確かに制御工学の立場では、制御の実現が重要であり、そのための数式が大切である。そして、研究者にとっては数式が十分に語ってくれるので、それ以上の説明は曖昧に逃げることで不要となる。制御の自動化の発展には、電子化の手法が有効であり、その回路の安定などが重視されたため、このような数式重視の世界が広がった。
 これを技術史の面で、もう少し振り返ってみよう。飛行機の歴史は、佐貫亦男氏の指摘の通り、不安定との戦いから始まった。通説では、ライト兄弟の成功は、当時のガソリンエンジンの実用化によるものが大きいとあるが、佐貫氏の指摘の、
 「ライト兄弟は飛行制御の重要性に気がつき、自分でその制御を体得した」
と言う側面が重要である。但し、この制御は、ある種の名人芸であった。さらに、第2次大戦で、一時的にしろ日本が世界に誇ったゼロ戦は、操縦伝達ワイヤの剛性を低下させることで、高速時のネガティブフィードバックを実現して、舵の操作を一様にした。これも、ワイヤの剛性を試行錯誤的に緩めるという、思いつきの産物である。
 このような名人芸の制御から、工学の世界で、誰でもできるようにするために、きちん落とした数式モデルに落とし込み、それを実現する電子回路を作ったことが、現在の制御工学の大きな力となっている。現在では、流体などを使う伝達機構でも、数式での解析が幅を利かしている。
 しかしながら、現実の仕事の場では、この数式は、一部を担っているに過ぎない。制御技術者は、現場に入り込み、色々な設備と、操作する人の要求をくみ取り、調整しながらモデル化し、制御機能を実現するのである。この場合のシステム思考は、ワインバーグの一般システム思考に近い。
 このような学問と現場の差について、工学の世界では、色々と間を詰める努力がされている。大学崩壊の話をする人たちには、この努力についても少し見直してほしいと思う。
 計測自動制御学会の学会誌などでも、その苦労は読み取れると思う。
 http://www.sice.jp/
 

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