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2017年10月 8日 (日)

過労死問題に対する一つの仮説(続き)

 昨日書いた、過労死問題に関して、少し技術職の分野で突っ込んでみたい。
 現在の技術職、特に設計などの段階では、CAE(Computer Aided Engineering)の環境が整っている。このシミュレーションツールを使えば、設計の多くの部分はすらすらと進んでいく。しかも、結果のイメージを3Dのグラフィックスで確認することも可能であり、至れり尽くせりの環境であることも多い。これに従い、作業時間も短縮されている。
 しかしながら、このような優れた環境でも、想定外の事態が発生する。このような時に、その製品の設計原理まで踏み込んで、検討することが必要になる。この検討が曲者である。多くは物理学から工学の各分野を理解していないと、なぜこのようになっているかは理解できない。
 例えば、今流行りの電気自動車のモーターの制御でも、モーターを動かしている部分には、三相交流の回転の理解が必要になる。しかも、制御系を設計するときには、これをクラーク座標系に変換して、回転に有効な部分とそうでない部分を分離し、制御している。このような原理まで、理解していれば、CAEの要求する情報も理解できるし、何が不足しているのかも見えてくる。こうしてCAEの動作原理を見抜き、検討の前提条件を見抜くことで、CAE結果を補正することもできる。
 しかし、このような電気工学の話は、大学の電気系でも学ばない子も多い。実際、クラーク座標について知っているとしたら、このようなモータ制御の基礎をきちんと学ぶか、系統解析をきちんと学んだ人だろう。
 実際、このようなCAEのシステムは、そのような制御などをきちんと学んだ、研究所の人間が制作することが多い。
 しかし、トラブル発生時の対処時間は限られている。そのため、現場の技術者に対応を任すことが多い。そこで管理職の言い分なら、
  「工学部出身ならこれぐらいはわかるだろう。」
ということになる。しかし、上で書いたように、
  「クラーク座標て何?」
というレベルの知識では、ここから調べなおさないといけない。
 さらに問題を複雑にするのは、『工学部出身者』でも、基礎能力に大きな違いがある、という点である。
 現在のCAEなどの多くのコンピュータ処理は、行列計算を主体とする、線形代数手法が基礎になっている。(テンソルは難しいのでパス・・・)このような数学の基礎ができている人間なら、クラーク座標というものは知らないでも、数式の意味をつかんで対処できるまでには、比較的短時間で立ち上がる。
 しかし、
  「行列計算とはなんだ?」
というレベルの『工学部出身者』も存在する。このようなものは、説明書を読むにも基本から学ばないといけないので、膨大な時間が必要になる。
 さらに言えば、上記のように研究所が開発したものなら、研究所がサポートするかもしれない。しかし研究所の人間は、ある程度の常識を持った人間を相手に考えている。つまり、数学の言葉で話せる人間相手である。こうして、相手の言葉もわからず、色々なことを調べる時間が必要になってくる。
 一方、管理職の目で見れば、
  「工学部出身だから」
ということで、今までの対処事例で工程を考える。つまり、
  「数式の理解ぐらいはできた人」
の相場で日程を切る。
 このような状況で、追い詰められた人間が出てくることもある。
 この問題に関しては、採用時にきちんと能力評価を行う。また大学などに関してもきちんとフィードバックをすべきだろう。
 ただ現状では、大学の教育内容に大きな差がある。これに口出しできないことも一つのトラブル要因だろう。

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