第2章からは、科学的管理法の具体論がある。現在の目で見れば、稚拙な面もあるが、知識の活用と言う面では、重要な内容を含んでいる。
まず、p44の新しいマネジャーの任務は、もう一度確認して欲しい。
- 一人ひとり、一つひとつの作業について、従来の経験則に代わる科学的手法を設ける。
- 働き手がみずから作業を選んでその手法を身につけるのではなく、マネージャーが科学的な観点から人材の採用、訓練、指導などを行う。
- 部下たちと力を合わせて、新たに開発した科学的手法の原則を、現場の作業に確実に反映させる。
- マネージャーと最前線の働き手が、仕事と責任をほぼ均等に分け合う。かっては実務のほとんどと責任の多くを最前線の働き手に委ねていたが、こらからはマネージャーに適した仕事はすべてマネージャーが引き受ける。
第2章3「銑鉄の運搬作業における取り組み」から
この節は、単純作業でも科学的な力を発揮することを示している。
まずp52
その第一歩は、科学的な視点に立った人材選びだった。科学的管理法の下では、融通に欠けるにしても、一度に大勢ではなく、一人の働き手だけに対応せざるをえない。強みや弱みは十人十色であるし、マネジメントする側としても、人材を十把ひとからげにするのではなく、一人ひとりの作業効率と豊かさを最大化するのが狙いだから。
これは、人間観察を大切にする、テイラーの手法の特徴を示している。
次に、p59~p65の体験は、自分で読んで欲しい。テイラーの工員との過酷な闘争を理解せずに、テイラーの言動を批判してはいけない。当時の稚拙な管理下では、工員の怠業を引き起こすことは多くあった。現在の自分の認識で、他の人々を批判する態度は、慎まなければならない。
さらに、 p65~p70のテイラーの経験談は、科学的な現場への対応法として、現在にも通じるものである。工学部の学生でも、このような知識と言うか智慧をきちんと身に付けているのは、少ないと思う。
まずp65
私は科学的管理法を構築するにあたり、一人ひとりが一日にどのような仕事をどれだけこなすべきかをマネジャーが十分に理解していないことこそが、現場の働き手とマネジャーの協力を妨げる最大の要因だと気が付いた。
このように、根本問題を認識することがまず重要である。そして、p66~p67の
つまり、重労働が筋金入りの作業者に及ぼす疲労度を探ろうとしたのだ。
その第一歩として、大卒の若手を雇い、このテーマを扱った英語、フランス語、ドイツ語の文献をすべて調べさせた。
~一部略~
しかし、記録はごくわずかにすぎず、意味のある法則性は導き出せなかった。
そこで、みずから実験に着手した。
~一部略~
二人にはあらゆる種類の作業をしてもらい、それを大卒の若手が毎日ストップウォッチ片手に観察して、一つひとつの作業の適正な所要時間を測定した。作業と少しでも関わりのある要因のうち、成果に影響を及ぼしそうなものについては丹念に調べて記録した。
確りした観察を行った。これを読めば、現場を見るということの、一端がわかると思う。さて、このデータから一般法則を読み取ろうとして、テイラーは失敗している。この部分は、物理学知識の現実への適用と言うことで、興味深い問題である。まずテイラーの目標は間違っていた、p67
最終的な狙いは、人間は一日何フィートポンド分の仕事ができるのか、見極めることだった。
これは、物理学で言う『仕事』の概念に振り回された結果である。物理学の言う仕事は、力の向きと、物の動きの向きが一致しないと仕事にならない。しかし人間の体は、そのようなものではない。ただこれだけで終わらないのがテイラーの凄さである。p68とp69~p70の記述を続けて見て欲しい。
ただし私は、腕利きの人材が一日にこなせる最大作業量をめぐっては、明快な法則が存在するに違いないと、以前にも増して確信を深めていた。データは丹念に収集、記録してあったため、必要な情報はその中にあるはずだという信念めいたものがあった。
収集した事実データに基づいて法則を導き出す仕事は、仲間うちで最も数字を得意とするカール・G・パースに依頼した。私たちはこの課題に新しい角度から挑もうと決めた。作業の各要素を図示して、全体像をつかめるようにしたのだ。パースは、重労働が腕っぷしの強い男たちに与える疲労について、さほど時間をかけずに法則性を見つけ出した。
法則の中身は、「押す、引くといった動作をしている時間は、一日の労働時間の一定割合にすぎない」というものである。
このようにして、92ポンド(41.7kg)の銑鉄を運ぶ場合には、実際に物を持つ時間は42%で、残りは重荷から開放しないといけないことを発見した。こうして合理的な、作業量を見出して、従来の12.5トン/一日から、47トン/一日の上げることに成功した。
この部分の考え方は、現在でも理論知識の実用化に応用できると思う。なおテイラーは、人間性にも十分配慮していた証拠として以下の部分も上げておく。p67
私たちが探ろうとしたのは、短時間あるいは数日間でこなせる最大作業量ではない。優れた人材が、まる一日働いた場合の成果である。
<続く>
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