プラトンが見るモノ
昨日書いた、プラトンの『国家』で、描いた
『真実』の世界
は、
『イデア』という理想的なモノ
で記述した世界である。このように、現実を抽象化し、理想化して記述する方法が、現在の科学的な西洋文明を生み出す力となっている。プラトンのイデアは、ルネッサンス以降の近代科学では、理想条件での思考という形で、大きな成果を生み出した。
例えば、ガリレオの思考実験では、
「同じ重さの鉄級を二つ繋ぐ」
と言う極端な形で議論して、当時のアリストテレスの自然学の
「重い物は速く落ちる」
と言う定説を打ち破った。更に、ニュートンの力学では
「大きさがない質点にその物体の質量が総てある」
と言う理想的な条件で、万有引力に支配された、物体の動きを数学的に記述できるようにしていった。
こうした抽象化した概念を上手く使うことで、西洋文明の理論的な力が増えていった。そこでは、『正しい』と『間違い』が明確になり、議論も進む。
このような、
抽象化した世界で普遍的な法則という本質を理解する力
を持った人間が、支配する国家を、プラトンは『正義』が行われる『国家』と考えたのだろう。
しかし、プラトンが考えた、抽象化された『形式的な記述』だけで、全てを支配するのは無理がある。
例えば、野中郁次郎が提案した『暗黙知』の発想も、プラトンとその子孫への対抗策だろう。
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